星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」


 シュー…パァン!!


 南条がひとつ目の花火に火を点ける。

 皆が空を見上げるのを合図に南条と俺は花火に次々と火を灯し始める。


 目映い光が吹き上がり、頭上には次々と色とりどりの花が咲く。

 ギャラリーの歓声。
 火薬の弾ける音。
 ほとばしる炎は鮮やかに辺りを映し出す。


 残り数本になった時、


「熱っ!」


 離れて火を点けていた南条が声を上げた。
 その声にはっとする。


「大丈夫か!?」

「平気!とにかく終わらす!」

 俺の呼び掛けに南条か答える。

 急いで火を点け終え、南条に駆け寄ると、南条は両手を重ねてぎゅっと握りしめている。
 俺は慌ててその手を取った。

「これか…」

 右手の甲が赤く腫れて、火傷をしていた。


「これ、冷やした方がいい。来い」


 俺は南条の手を引いて煌めく光の中をくぐり、宿舎の建物の脇にある流し場へ向かった。


「ごめんな。やっぱ南条に手伝わせなきゃ良かった…」

 花火の火付け役なんか南条にさせるべきでなかった。
 なんで俺はそんなことをさせてしまったんだろう…

 自分に腹が立って、唇を噛む。


「ううん、私が勝手にやったから」

「それを監督するのが俺の仕事なのにな…」

 情けなくて深い溜め息が出る。


 遠くから僅かに生徒達の黄色い声が風に乗って聞こえるばかりの静かな宿舎の陰。ひとつきりの電球の灯りに蛾が舞っている。

 蛇口を捻るとコンクリートの流し台にパチパチと飛沫が跳ねる。


「ごめんな」


 俺の監督不足で南条を火傷させてしまった。

 腫れた白く小さな手を見つめる。


 と、突然俺の掌の中を南条の手がするりと抜けた。