出来上がったばかりのハンバーガーがどっさりと入った紙袋を手にした兄が私と先生の前にいた。


「お兄ちゃん…何してるの?」

「この先の友達のとこに遊びに行ってんだよ」

「何その山のようなハンバーガー。もしかしてパシリ?」

「違うよ!ゲームで負けただけだ!」

「そういうのをパシリって言うんでしょ」

「そんなことより…」


 兄が再び先生を見る。
 どこか訝しげに…


「あっ!先生、兄です!!お兄ちゃん、こちら…」

「舞奈さんの学校の教師で進路指導のお手伝いをさせて頂いております初原と申します」


 先生が兄に礼儀正しく頭を下げる。


「あ、あぁ、うちに来て下さった?両親から聞いています。妹がお世話になってます。

 いや…お若いのでその、『友達』かと…すいません…」

「気になさらないでください。よく大学生に間違われますから気にしてませんので」


(でもお兄ちゃん、『友達』って…高校生に間違えたよね、多分…)


「舞奈さんはいつも木苺シェイクなんですか?」

 先生がちょっと笑いを堪えるようにして兄に訊ねる。


「あぁ、はい。気に入ったものはエンドレスで食べ続けるんです、コイツは。
 コーヒー飲みに行けば必ず生クリームたっぷりのウインナーコーヒーとかカフェモカだし、駅向こうの行きつけのケーキ屋ではレモンのチーズケーキ一択だし」

「夏は巨峰のタルトだもん」


 先生が堪えきれなくなってふふっと笑う。


「仲良し兄妹ですね。
 舞奈さんから進路の件もお兄さんはずっと応援してくれていたと聞いています」

「いやぁ…」

 兄がなぜか照れたように頭を掻く。