書きたいこといっぱいあるけど、なるべくシンプルに。なるべく丁寧に。

 書いては消し、消しては書いて。

 何度も何度も見直しして。

 1時間もかかってようやくメールが出来上がる。


(♡とか使っていいかめっちゃ迷っちゃった)


 結局勇気がなくて使えなかったけど。


 いつも揺花や友達との連絡はさらっとメッセージアプリでやり取りするのが多かったけど、先生とはメールで良かったと思う。

 時間は思いっ切り掛かったけれど、迷って、悩んで、先生のことだけ一心に思って書いたこの時間もなんだか愛おしいから。


(返信…来るかなぁ…)


 スマホが気になって気になって、もう勉強どころじゃない。机に広げたテキストを見るともなくパラパラ捲る。


(先生、おうちに居るのかなぁ…)


 溜め息は更に数を重ねる。

 頬杖を突いて白い目覚まし時計に眼を遣る。
 送信ボタンを押してから10分。


(もう1時間くらい経ったかと思ってた!)


 もう一度スマホを覗き込む。


(先生読んでくれたかなぁ…)


 やっぱりアプリだったら既読が分かったのに…

 スマホを手に取り、代わり映えのしないメール画面を何度も見る。


 と、突然手の中でスマホが震え、お気に入りの女性アーティストの曲が流れ出す。

 メールの着信音。

 そして画面には…


(先生!!)


 メールを開く指先が緊張する…


――――――――――――――――――――

Date: 201x 11/xx 12:26

From: 初原先生〈x…_pleiades9x0503@……〉

Sub: Re:南条舞奈です。

―――――――――――――――――――――

初原昴です。

メールありがとう。頑張ってるね!

質問の件。
これ結構難しい方だと思う。

メールで説明しても解りにくいと思うから、電話番号教えてくれたら掛けるけど、時間ある?

-END-
―――――――――――――――――――――



(先生と電話!?)


 今掛けちゃってもいいのかな…

 画面に映した先生の番号はこの数日何度も見つめて、もう既に暗唱してしまってる。


 ドキドキしながら通話ボタンを押す。