「先生ありがとう」

「またいつでも聞きに来いよ」


 今日もふたりで過ごす英語準備室。

 昨日の約束通り今日は不出来な模試の見直しを教えてもらった。


 先生は今日も優しい。
 隣に座ってひとつひとつ丁寧に教えてくれる。
 出来なかった模試も先生にかかれば嘘みたいに解けるようになる。


「あ、そうだ!先生、授業でひとつ分からないとこあったの。教えてもらってってもいい?」

 帰る準備をしていた私はふと思い出して言う。


「あぁいいよ。どれ?」

 自分のデスクで何か本を見ていた先生が立ち上がって、私の座る傍らに来る。



「これなんだけど…」

 教科書を広げると、

「どこ?」

と先生が後ろから覗き込む。


(あれ…?)


 隣じゃなくて後ろ?いつもは隣で教えてくれるのに…


 私の肩口から教科書に視線を落とす先生。不意に距離が詰まって緊張してしまう。

 ただでさえいつもより近いのにもかかわらず、先生は更に私の背中から覆い被さるように机に両手を突いた。


(!!…ち…近いよ!)


 突然吐息も鼓動も聞こえてきそうな距離に迫って戸惑う。
 でも私の前には机があるから身動き出来ない。