石田係長は、福島課長の質問に応えて、次のように主張した。

 「福島課長が仰せのとおり、たしかに本談合は、おトヨどのに一括して返礼を行うことを目的として開かれたものに相違ござらんが、ご覧のとおり意見は未だまとまらない。それならいっそ、各々が思い思いの返礼を行えばよいのではないか、そう申したまででござる。」

 石田係長は口元に皮肉を浮かべながらこう続けた。

 「どうも、過分の返礼を意図する御仁もおられるようですしな。」

 この発言に反発したのは前田課長であった。企画室の古参で、現在はブランドビジネスのライセンス管理をとりまとめる、来年には退職する小柄で温和な男である。

 彼は頬を赤らめていた。