当時、明と永倉は一言も会話をしたことがない

永倉が特別というわけではなく
明が人と話さなかったからだ

いつも伏し目がちにしていて、喜怒哀楽を見せない
ひとりでいるからといって、廻りに無関心なことも無く
喧嘩は、1番に止めに行く
責任感もあり、男並みになんでもやった
何より、誰よりも皆の輪を乱すことを嫌がった

そのくせ、「面倒くさい」が口癖だから

やる気があるのか、ないのか




明に惚れていたのは、永倉だけだった
道場の男達は、明を女として見ていなかった

「アキラは、一人娘だから自分より強い奴を探して
婿養子にするらしいぞ」


つまり、やめておけ

そう、忠告されていた



明の家も知らない、誰かと話しているところも見ない



なのに、そんな話が出ても、納得できなかった