「そっか、もう決めたの?」

「はい、地元に帰ろうと思います」


大阪出張から戻り2週間が経った日曜の午後、待ち合わせ場所のカフェに現れたあずちゃんは晴れ晴れとした表情をしていた。

あれから…。

水瀬さんの働きにより、あずちゃんのところに訪れた大河原さんは、子供の認知と成人するまでの養育費を払う約束をしたらしい。

だけど、婚姻に関しては消極的で、あずちゃんも望んでいなかったため、彼女は未婚の母になることを決めた。

私としては2人で幸せな家庭を築いて欲しいという思いもあったけど、幸せの形は人それぞれだと理解している。


「あずちゃんが辞めたら寂しくなるなぁ」

「色々心配かけてごめんなさい。それと、ずっと黙っててすみません」

「ううん、私はただお節介を焼いただけだよ」

「私、紗夜先輩に引かれるんじゃないかって思ってて。相談したかったけど、できなかったんです」

「そんな! するわけないよ」


例え、一時の愛情でも、もしくは誤りだったとしても。

芽生えた命に罪はないし、尊いものだと思うから。

両親が揃っていてもいなくても、産まれてくる子供は平等に幸せであって欲しい。幸せであるべきだと思う。