気にしていた? 水瀬さんが、私を?

彩さんの話によると、打ち上げの途中で昼間の出来事を思い出し、大河原さんと会っているのかもしれないと伝えたところ、水瀬さんは同僚たちに連絡を入れて大河原さんの行きそうな店を聞きだしたらしい。

それでいくつか目星をつけた彼は、中抜けして探し回ってくれたとか。


「部下とか責任とか言ってたけど、それだけじゃないよ」

「そうでしょうか」

「まぁ、あいつも色々複雑だからなぁ」

「複雑?」

「これ、私から聞いたって言わないで欲しいんだけど……」








出張最終日の朝は、清々しいほどの天気だった。

結露で張り付く窓を開けると、ピンと張り詰めた空気が新鮮で気持ちいい。

軽くシャワーを浴びて髪を乾かし、少し浮腫んでいる顔はメイクで誤魔化し、昨夜のうちにまとめておいたスーツケース下げて1Fの食堂の向かう途中、水瀬さんと出くわした。

彼もこのままチェックアウトするらしく、大きなバッグを持っている。


「おはようございます」

「おはよう」

「昨日は、」

「昨日の話はもういい。さっさと食べて出社するぞ」

「……はい」