今度は水瀬さんの顔色が、さっと変わった。
彩さんも眉根を顰めている。
「それって何か飲まされたんじゃないの? 睡眠薬とか」
「え、まさかそんなことは……」
「病院に行くぞ、調べたらすぐに分かる」
唸るような声でそう言った水瀬さんは、乱暴に私の腕を取り歩き出そうとする。
それを慌てて止めようとしたけど、足元は未だにふらついていて、結果的、彼の腕にぶら下がるような体勢になってしまい、抱きかかえられた。
「待ってください、大事にしたくないです」
「そんなふらふらした足でよくそんなことが言えるな」
「今回のことは私にも落ち度があります、水瀬さんが言った通り回避しようと思えば出来ることでした。でも、どうしても大河原さんに確認したいことがあって」
「確認ってなんだ? 二人きりにならないとできないことか」
「そんな言い方しないでください!」
大きな声で叫んだ私に、水瀬さんは少し驚いたように目を見開いた。
その様子を眺めていた彩さんが仲裁に入る形で、「昼間、大河原が話していたことだよね?」と、大まかに説明してくれる。
そして、私の考えと同じく、東京支店の企画部にいる”あずちゃん”で、まず間違いないと付け加えた。
「私なんかより、あずちゃんの方が傷ついているんです。だから、あずちゃんのためにもお願いします、大事にしないでください」



