「間に合ったからよかったものの、もう少しで危ないところだったぞ。こうなる前に回避できただろ」

「すみません……」

「だいたい、どうして2人で飲みに行ったりしたんだ。あいつの噂は聞いていただろ」

「それには理由があって」

「じゃぁ、なぜ相談しない?」


それは、考えもしなかった。

だってこれはプライベートなことだし、私じゃなくてあずちゃんのことだし、水瀬さんに迷惑かけたくなかったから。

でももし、相談していたら何か力になってくれた……?


「前も言ったけど、俺には部下を守る責任があるんだ」

「あ、そういうことか」


心の呟きを思わず口から出してしまった私に、水瀬さんはさらに青筋を立てた。


「そういうことってどういうことだ!」


だって、そうでしょ、あくまで上司だからでしょ。

ましてや、出張中に何かあったら監督不行き届けで水瀬さんが咎められてしまう。それこそ迷惑だよね。なのに、私ったらこんな時でさえ、胸をときめかして馬鹿みたい。


「答えろ、高木」

「ちょっと、落ち着いてよ」


まぁまぁ、と彩さんが間に入ってくれる。


「紗夜ちゃん、顔色が悪いけどお酒飲み過ぎたの?」

「いえ、それほど飲んでないと思うんですけど」

「けど?」

「なんだか急に酔いが回ったというか、一瞬意識が混濁してしまって」