ギッと睨んだつもりが、思いの他、目に力が入らず驚いた。
自分のコメカミに手のひらを当てる。
おかしいな……。
それほど、飲んだはずじゃないのに。
「あずちゃんは私の大事な後輩なんです。軽そうに見えるけど根はしっかりした良い子なんです。妊娠させたならちゃんと責任とってください」
「もちろん、俺の子なら責任とるよ。でも、そのあずちゃんってのが、企画部の子かどうかは思い出せないんだけど。あずちゃん、なんて名前、他にもたくさんいるよ」
「まだ、しらばっくれるんですか?」
「しらばっくれるも何も……思い出せないだけだって。そうだ、もっと静かなところに行けば思い出せるかも」
静かなところ?
大河原さんの言っている意味が分からず頭を傾げると、その方向へ大きく体が傾いた。
慌てて床に手を付こうとした瞬間、誰かに体を抱きとめられる。
いつの間にか、私の隣に移っていた大河原さんはまるで小さな子を宥めるように私の頭を撫で、「行こうか」と耳元で囁いた。



