勧められるままにお腹を満たしながら、ハイボールを喉に流し込む。

彼が注文してくれた料理はどれも美味しかったし、途中で変えてくれたお酒も飲みやすい。

そうしながら大河原さんを観察してみれば、なるほど、女性に慣れているだけあって細やかに気が利くようだ。それも、決して押し付ける感じではなく、媚びるでもなく、自然体に、だ。

思わずふふっと笑ってしまう小話と、絶えず向けられる笑顔。

こりゃ誰だって好きになっちゃうよなぁ――――本性を知らなければ。


「さて、そろそろ本題に入る? 俺に聞きたいことがあるんだよね」

「はい、昼間に言っていたことで」

「深町と話していたことだろ。まぁ確かに俺は色んな女子と仲良くなるけど、浮気はしない主義なんだ。付き合っている時は真剣にその子だけ、」

「あ、そういうのは、どーでもいいんです」

「ん? そうなの?」

「はい、大河原さんが二股かけようがどうしようが私にはどうでも良い話で」

「はっきり言うね……」

「”あず”って呼んでた人のことです」


その名前を出した瞬間、大河原さんは露骨に嫌な顔をした。


「その、あずって子は企画部の長野さんですか?」

「さぁ、部署はどこだったか覚えてないな」

「とぼけないでください」