「知ってます? 女性って髪型1つ変わるだけで、気分がぐっと変わるんです。病気をして、塞ぎがちになっていた人もお洒落をしたら外に出たいなって思えるんですよ」
「あぁ」
「男の人だって、そりゃ髪の毛は無くなっちゃうかもしれないけど、1本でも多く残す方法だったり、清潔感をもたらすような髪型の提案やシャンプーにも拘って……あ、すみません」
「どうした?」
「いえ、私、つい喋りすぎて。休みの日に仕事の話なんて嫌ですよね」
ついさっき、プライベートの時間に仕事を持ち込みたくないと言われたばかりなのに、私ったら本当に馬鹿。せっかくこうして座って話ができるなら、もっと別の話題をすればよかったのに。
柄にもなく萎んだ風船のようにしゅんとしていると、水瀬さんが「そうだな」と呟いた。――ですよね、失敗した。
「確かにそうだが、不思議なことに今は別に平気だった」
「……え?」
「なぜだ? 高木の話がアホすぎるからか」
「は? なっ、アホって」
「さっきの、もっとちゃんと調査をして企画を練ってみろ。方向性は悪くない」
「本当ですか!」



