屁理屈もへったくれもあるもんですか。

今、すっごく大事な話をしているんです。

水瀬さんが仕事とプライベートを分けたい理由に、過去の職場恋愛で最悪な経験をしたことが含まれるなら、それを払拭しないことには私にチャンスが巡って来ない。

――と、いうのは大前提で、水瀬さんの元彼女。

すっごく気になるー!


「美人ですか?」

「は?」

「元カノですよ! 水瀬さんと付き合える人って、やっぱり美人なのかなって」

「そうだな、高木よりは」


ガーン……でも、そうですよねぇ。

分かってますよ、私でもそこまで厚かましくないです。それでも少なからずショックを受けている(自分から聞き出したくせに)と、水瀬さんはフッと一瞬だけ口角をあげて席を立った。

そして、そのまま何も言わずレジの方に向かう。


「ん! ちょっと待ってくださいよ」


あーあ、私の馬鹿バカばか。

喋ってばかりで全然ケーキに手を付けてなかった。

大急ぎで食べて、残っていた珈琲を喉に流し込み、まさにカフェから出て行こうとする水瀬さんの後を追う為、レジで鞄の中身をひっくり返す勢いで財布を探す。

すると、そこにいた店員さんがにっこり微笑んだ。


「お会計でしたら、先ほどの方から頂いております」