「ちょっと何なの? この子ったら。ずっと傘を眺めてニヤニヤしてるわ、気持ち悪い」

「水瀬に借りたんだって」

「そうなの? それで目がハートなのね」

「ていうか傘を借りただけでキュンキュンするとか、中学生かよ」

「あら、誰だって恋をすると少女に戻るものよ」

「昌也は少年だけどね」

「言ったわね、ユーリーヤー」


もう、さっきからうるさいなぁ。

喧嘩するなら外でやってよ、私は今、水瀬さんのことを考えるのに忙しいんだから。だいたい、ユリヤの少女時代なんて女王様のごとく男子を引き連れていたに決まっているし、昌也の少年時代はやりたくもない野球をやらされて泣いていたに違いない。

そう言ったら、2人に叩かれてしまった。

だいたい当ってるらしい。


「しかし、いいお天気ね。日曜日なのに2人とも用事ないの?」


冷蔵庫からオレンジジュースを出してきた昌也が、私たちの分も注いでくれながら尋ねる。

ちなみに顔面はパック中なので、真っ白だ。