藤原のバカ、ボケ、おたんこなすー!
何も水瀬さんの前でそんな話をしなくてもよくない? お陰で誘いにくくなっちゃったし、誘ったとしても同期会があるだろって言われるに決まってる。
ていうか、あいつはどんだけ同期が好きなの?
同期愛が強すぎるんだよ!
バシン、とタオルを床に叩きつける。
「はぁ……何やってんだろ、私」
物に当たったところで何か解決するわけでもなく、ガラスに映った自分は酷く不細工な顔をしている。あぁ、ダメ。こんなんじゃダメダメ。
気を取り直して筋トレに励もう。
藤原の件があってむしゃくしゃしていた私はいつもと違う曜日だけど、ジムに来ていた。
ここはオフィス街とあって仕事帰りのサラリーマンやOLの姿が多く見て取れる。その中で一人、70代だろうか、白髪の目立つおじいさんがマシンの前で困った顔をしているのに気が付いた。
「あの、どうかしました?」
「あぁ、いやね、使い方が分からなくて」
「インストラクターを呼んできましょうか?」
「いやいや、さっきも聞いたんだが、歳だなぁ、1回じゃ覚えられなくて」
「じゃぁ、一緒にやりましょうか。お隣いいですか?」
「おお、ありがとう」



