――――と。
どうして何気なく思った時に限ってタイミング良く出くわしてしまうのだろう。藤原と共にエレベーターに乗り込こみドアの方に体を向けると、水瀬さんが小走りで走ってくるのが見えた。
「お疲れ様です」
「お疲れ」
「あの、」
唐突ですけど、クリスマスの予定は?
なんて今ここで聞けるわけもなく、視線だけこちらに向けた水瀬さんに「なんでもないです」と、苦笑いを向けてしまう。さすがの私だってね、TPOはわきまえてますよ。
なのに、
「そういや高木、クリスマスの予定は?」
「へ?」
何を思ったか、藤原がいきなり尋ねてきた。
こんなところでやめてよ! そう、目で訴えても、奴は涼しい顔。
「同期のみんなで集まろうって話があるんだよ、恋人のいないやつ限定で」
「え、そうなんだー。でも、私は」
「お前も彼氏いないだろ、寂しいもん同士慰め合おうぜ」
「えええええっと、わたしはちょっと、」
あのね、だからね。
さらに目で訴えるものの、藤原はニコニコ笑ったまま。いつもは可愛らしいと思うその笑顔も今だけは悪魔に見える。
とりあえず、その返事は後で。
そう答えようするより先に、水瀬さんがこちらを向いた。
「いいんじゃないか、そんなことができるのも今のうちだ。参加したらいい」



