「でもまぁ、恋愛は理屈じゃないしね」

「うん」

「無しだなって思った相手が、意外な存在になることもあるんだよ」


そうだよねぇ、そうあってくれたら嬉しいんだけど。

あの水瀬さんだしなぁ、一筋縄ではいかないんだよなぁ、どっかに惚れ薬でも売ってないかなぁ。

そんなことをブツブツ言いながら筋トレしていると、さっきのインストラクターが近づいてきた。笑顔もさることながら声も爽やかで。滴る汗も爽やかとかアイドルかよ。

そんな彼と少し話したあと、ユリヤが小声で囁いた。


「今日、デートなんだ」


えッ! 彼と!?

嘘、信じられない! だってユリヤってアラフィフくらいのおじさんがタイプじゃなかったっけ?

あのインストラクター、どっからどう見ても年下なんだけど。






「うーん、悩む……」


クリームたっぷり高菜とフルーツのサンドか、BLTサンドか。

両者共に捨てがたく陳列棚の前の占拠していると、背後から急に声を掛けられた。


「うげ、高菜とフルーツのサンドとか気持ち悪い」


振り向くと同期の藤原だった。

会社の向かいにあるコンビニなので遭遇すること自体はよくあることだが、営業の彼がこの時間に帰社しているのは珍しい。