「ワシの若い頃はなぁ~」


わーでた、昔の武勇伝。

杉山課長は普段とてもいい人だけど、お酒が入ると昔の自慢話が始まるから、ちょっぴり面倒くさい。もう何回も聞かされている話に、うんうん頷きながら気持ちは水瀬さんの方に――――、


「よー!高木! 飲んでるか!」

「飲んでますよ、江夏さんもだいぶ進んでいるみたいですね」

「何言ってんだよ、まっだまだ今日は飲むぞー」


調子のいい時とお酒を飲んだ時だけ気が大きくなるんだよなぁ、江夏さんは。

悪い人ではないんだけど、時々、衝突しちゃうこともしばしばで、飲みの席くらいは愛想よく応えてあげないとなぁ……と、思いつつ、気持ちはやっぱり水瀬さんの方へ。

”休みの日は何してるんですか?” って、知りたい。

猛烈に知りたいし、私もそっちに混ざりたいんだってば。


「あれ、杉山課長、寝てない?」

「え! ほんとだ! 今、何時ですか?」

「9時45分」

「あ~、そろそろ(課長は)寝る時間ですよね。私、タクシー呼んできます」