乾杯が終わったところで、料理が続々と運ばれてきた。
和食をメインにした創作料理だ。
料理長おすすめのお酒も進み、初めは畏まっていた人たちも打ち解けて饒舌になっていく。もちろん、話の中心は水瀬さんだ。
「水瀬さんってどこに住んでいるんですか?」
「白金だ」
「わーおしゃれ! ちなみに誰と住んでるんですか?」
「独りだけど」
「え、彼女とかいないんですか!?」
うわー、何その話題、ものすっごく混ざりたい。
だけど、奥の席にいる水瀬さんたちとは程遠い下座にいる私は、ドリンクや料理の追加注文に忙しく、聞き耳を立てることしかできない。
それに加え、
「高木くん、この料理はなんていう名前かな」
「それは、和風のブイヤベースですね」
「上手いのう、こっちは?」
「くじらと蛤の土瓶蒸しですって、美味しいですね」
隣に座っている杉山課長のお世話に忙しいんです。
御年62歳、勤続40年、定年延長をされても尚、元気に働いている杉山課長は、みんなのおじいちゃん的な存在で優しく、時に重大なアドバイスをくれる大先輩。
私は何故かこの杉山課長に気に入られていて。



