少し早く着き過ぎたかな。

時計と睨めっこしながらBARのドアを開けると、待ち合わせをしていた人物はすでにカウンター席にいた。脚の長いバースツールに無理なく座り、静かにお酒を飲んでいる。

「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれたバーテンダーに「同じものを」と注文し、隣に腰を下ろす。


「ウイスキーをロックでの飲む女は可愛くないですか?」

「時と場合によるな」

「例えば?」

「酔い潰れて面倒だと思う相手は可愛くないが、そうでもない相手はアリかと」

「言っている意味が分からないんですけど」

「問題点は酔い潰れた相手をどうするかにあるんだ。放っておくには気が引けるし、だからといって連れて帰るわけにもいかない。そういう相手に強い酒を飲ますのは嫌だが、紗夜の場合どっちでもいい」

「つまり?」

「紗夜は酔っぱらっても可愛いってことだ」


わぁ、顔から火が出そう。

自分で聞いておきながら恥ずかしくなって、やめてくださいよって、彼の腕を叩く。よく真顔でそんなセリフを言えたもんだと、よくよく見ると彼の耳も赤くなっていた。


「水瀬さんって、いつぐらいから私のこと好きでした?」


恥ずかしいついでに聞いちゃえ! っていうテンションで聞いたんだけど、ジロり睨まれた。