「柴咲……?」
「ヨリを戻したって噂になってますけど」
「くだらない噂だな」
「でも、ゼ〇シー!」
泣き声交じりに言う私に、水瀬さんは眉根を寄せて首を傾げる。
なんのことだ、と顔に書いてあったので説明すると、さらに訳が分からないといった様子で私を見つめた。
「それがどうして俺と、だなんて思うんだ」
「ですから、2人がヨリを戻したという噂があって。元婚約者のこともあるし安心させるために結婚を早めたのかなって……」
ポロッと、また涙が零れる。
「今日はよく泣くな」
「水瀬さんのせいですよ。1度決壊した涙腺はそう簡単に元に戻ったりしないんだから」
「そうだな、そう簡単に戻らない。俺も同じだ」
「え、」
「久しぶりに再会したところで、お互いに誤解があったと分かったところで、柴咲の気持ちがまた俺にあると知ったところで、俺にとっては過去のことだ。やり直す気はない。あいつがどうしてその雑誌を見ていたか知らんが俺には関係のないことだ」
きっぱりと言う声、涙を拭う温かい手。
もうこれで満足したかって、水瀬さんは優しく笑う。



