「水瀬さん……?」
「藤原のところに行くのか」
「えっ、そうじゃなくて、あの」
「じゃぁ、出るな」
スマホを持つ手の上に、水瀬さんの手が重なる。
向けられた黒い瞳、寂し気な色。
初めて彼に会った時と同じ、触れたら消えて無くなりそうな表情に胸がギュッと締め付けられる。
そうだ、この瞳。このどこか儚げで守ってあげたいと思う瞳に私は恋に堕ち、そして今も魅了されているんだ。焦がれるほどにずっと。
「さっき、今まで何をしていたんだと聞きましたよね?」
「あぁ」
「何をしていたかというと、」
重なっている手に力がこもった。
信はいつの間にか止まっている。それでも手を離そうとしない水瀬さんは、私の言葉を待っているように「いうと、何だ?」と囁いた。
「水瀬さんを探していました。最後に伝えたいことがあって」
「最後に?」
「好きです。水瀬さんのことが好きなんです」



