――好きです
――いや、だから無理だって
理想通りの人なんです、正直に言って顔が好きです。
そう言われてもな、って困ったように肩をすくめる。
――月が綺麗ですね
――なら、青くはないな
外見だけじゃなく、中身を知れば知るほど好きになって。
もうどうしようもないくらいなんですよって言った私に、やっぱり困った顔。
――気持ちだけは受け止めてくれませんか?
――もう受け止めてる
水瀬さんはいつだって困ったようにしながらも、私の告白を聞いてくれた。1度としてぞんざいに扱わず、面倒くさそうにもせず、真っすぐ真摯に。
――好きです
――困った奴だよ、お前は
――期待しても、いいですか?
いつの間にか、彼は断らなくなっていた。
応えない代わりに、拒否もしない、困った顔もしなくなって、距離が近づいたように見えたり、まだまだ遠く感じたり。立場はどうであれ、大切にして貰えてる実感はあったりして焦らされる中、柴咲さんが現れた。
でも、考えてみて。
1度として本人の口から彼女とよりを戻したんだと聞いていない。



