「えええ、そんな藤原ぁ」と泣きついた私に、甘えるなとバッサリ。そりゃそうだ。つい、ほんの数分前、もう藤原に恋愛相談はしないと心に誓ったのに、情けない限りだ。
ふと、そんな私のどこが良かったのかと聞いてみれば。
「バカみたいに真っすぐで一途なところ」だと、照れくさそうに教えてくれた。
それで、思い出す。
『紗夜の良いところは素直で一途なところなんだから』
『紗夜先輩の長所なんて一途以外に無いんです』
水瀬さんに何度振られても諦めなかった私に呆れながらも、昌也やあずちゃんが言ってくれた言葉。その一途さが今の自分を縛り付けているようで辛いけど、気持ち揺らぎはない。
それなら、最後にもう1度だけ……。
「私、ちょっと行ってくる」
「ん? 行くってどこに?」
「行って、一途を証明してくる!」
ダンッと机に手をついて立ち上がり、椅子に掛けてあったコートをひったくるようにして取る。それから鞄を開けて中にある財布を出そうとしたところ、藤原が「いいっていいって」と手を振った。
「でも、」
「ただし、次はお前の奢りな? 行ってこい」
ちょっぴり意地悪な笑顔が零れる。
ありがとう、藤原、大好き。
慌ただしく出ていく背後で、「バーカ」と笑う声が聞こえた。



