「高木と医務室に行った日あるだろ」
「柴咲さんの元婚約者が騒ぎを起こした日でしょ?」
忘れもしない。
水瀬さんを想い続けることに限界を感じた日であり、藤原に告白された日だ。
「俺、あの時、お前に、その……キスしようとしただろ」
「う、うん」
恥ずかしそうに言うから、こっちまで照れくさくなる。
というか、どうして今更その話をするの?
「その時さ、医務室のドアのところに水瀬さんがいるのに気づいたんだ」
「え?」
そういや、藤原の視線が一瞬、私の後方に向かったんだっけ?
何を見てるんだろうと不思議に思ったから覚えてる。
「正直、当てつけというか。どうするかな? って思いもあって、そこにいるのが分かっててキスしようとしたんだ。普通、何とも思ってない相手なら見ないふりをするだろ。用があってもタイミングを計るとかさ。けど、水瀬さんは寸前で入ってきた」
「……」
「しかも、結構慌ててたぜ」
「それってどういう、」
「さぁーな、自分で考えろ」



