どうして分かったんだろう?
驚く私に、藤原は「ずっと見てたから分かるんだよ」と、また胸が疼くようなことを言う。だけど、それは嫌味な言い方ではなくて、彼らしい愛のある皮肉だ。
少し酔いが回ったのか薄っすら赤く染まった顔を傾けて、覗き込むように私を見る。
「今日、何かあっただろ?」
鋭い。
ここまできたら隠すのもどうかと思い、本屋で柴咲さんを見かけたことを話した。
「ふーん、ゼ〇シーね。相手は水瀬さんってか?」
「状況から言ったらそうだよね」
「どうかなぁ、そんなすぐすぐ結婚ってわけにいかなくね? まだ、元婚約者の件も片付いてねぇーだろ」
うーん、その辺は分からない。
ドラマとかなら障害を乗り越えて今すぐゴール(結婚)ってなるけど、現実社会の男の人は慎重に物事を運びたいと思うかもしれない。1~2年、様子を見てから。なんて話もよく耳にする。
ていうか、私。
柴咲さんが雑誌を見ていたってことだけで、こんなに落ち込むのに、この先、2人が結婚したという話を聞いたらどうなるんだろう? 凹み過ぎて地球の裏側まで行っちゃうんじゃないかな。
なんて冗談はさておき、藤原にもうこの手の相談はしないでおこう。私にだってそれくらいの分別はある。そう思ったのに、彼は「この前さ」と話を続けた。



