一秒が一分に、一分が一時間に感じるような沈黙が続いた。
その間も料理は運ばれてきて、無言で向き合う私たちを店員さんが心配そうに視線を送る。やがて不意にスイッチが入ったかのように藤原は、残りのビールを一気に飲み干しテーブルにゴツンと置いた。
「つーか、振るなら電話で済ませろよ、バーカ」
「ご、ごめん。でも直接言わなきゃって思って」
「期待した分だけ凹むだろ、バーカ」
「……ごめん」
「ってか、本当に不器用だよな。今日、会った瞬間、振られるって分かったわ」
え、そうなの? って聞き返すと、またバカって言われる。
ボキャブラリーが少なくない?
藤原が料理を食べ始めたので、私も唐揚に箸を伸ばすと、ひょいっと取り上げられた。子供か。睨んだら、意地悪そうに笑ってシーザーサラダを目の前に置かれる。良かった、いつもの藤原だ。
勤めてそうしてくれているのは分かっているけど、ズキズキと痛んでいた胸が少し軽くなる。
振られるのも辛いけど、振る方も辛いんだよね。
水瀬さんは、どんな気持ちで私の告白を受け止めていたの――?
「ほら、その顔」
「えっ」
「どうせ水瀬さんのことを考えてるんだろ? 隙あらば水瀬さんだな」



