――――――って、無かったことにされたの。
信じられる? その後、何度か折を見て話をしにいったけど、見事にかわされて、3日目くらいからはウザがられるようになって、さらに一週間後には避けられるという……。
「何でなの!」
「先輩、怖ぁい」
向かい合わせのデスクにいるあずちゃんが、小動物のように怯えた目でこちらを見ている。
そんな彼女に、ごめんごめんと謝りながら気分を変えるため、珈琲を入れに席を立った。
水瀬さんに再会したとき、これは運命だと思ったの。
そして、もっと好きになると直感したの。
それなのに、スタートラインにすら立たせてもらえないなんて……。
「紗夜先輩、今夜、合コン行きません?」
デスクに戻り、珈琲を啜っていると、ファイルの間から顔を覗かせたあずちゃんが小声で話しかけてきた。普通でもぱっちりしている目が、今日はつけまつげで3割増しだ。
「合コン?」
「なんかぁ、予定してた子が急に行けなくなっちゃって。先輩、彼氏いないですよね?」
「いないけど、」
「じゃぁ、行きましょう~よぉ」
「私はいいや」
「どうしてですか? もったいなぁい、出会いのチャンスなのに。キープだけでも作ればいいのにぃ」