「何、飲む?」
「じゃぁとりあえず、ビール」
「俺も。料理は鳥の唐揚とつくねの照り焼き、キムチチャーハン、刺身の盛り合わせ、シーザーサラダ……他、何か食べたいものある?」
「ううん、ひとまずそれで」
今回、案内された席はこの前とは反対側にあるテーブル席で、注文を受け取った店員さんが「お待ちくださいー」と慌ただしく下がっていく。
大学生くらいだろうか元気のいい女の子で、どことなくこの前いた女将さんに似ているような気がする。
もしかしたら娘さんかな? そんなことを考えているうちに生ビールが2つ運ばれてきた。
「んじゃま、乾杯」
「乾杯」
ゴクゴクゴク、美味しい。
ジョッキの三分の一ほど一気飲みして一息つくと、同じくらい飲んだ藤原が泡の付いた口元を拭いながら上目遣いでこちらを見る。その小悪魔級に可愛い顔、やめて。
「お前さ、もしかしてこの店来たことある?」
「えっ、なんで」
「さっきトイレ行くとき迷う素振りがなかっただろ」
そうなのだ、お店に入ってすぐトイレに向かったんだけど、ここのトイレは厨房の脇を抜けて5段ほどの階段を降りたところにある。少しわかりづらいため、店員さんに場所を尋ねる人がチラホラ。
きっと私の顔には「!」マークが浮かんでいて、それを見抜いた藤原は「やっぱりな」と呟いた。



