今まで同期の集まりなんかで休日に会ったことがあるけど、意識してなかったからかなぁ。特別何とも思ってなかった彼が妙にかっこよく目に映る。
綺麗めのブルゾンに黒のダメージスキ二ー。お洒落過ぎずかつハイセンスな装いは、ほっそりした彼によく似合っている。それがどうしてか、普段のスーツ姿より大人っぽく見えると素直に伝えると。
スーツ姿だとブレザー感が出て反って学生っぽくなるんだと、藤原は頭を掻いた。
すれ違う女の子たちの視線を集めている。
同じ歩幅で歩いてくれる。
「危ないから、右に寄れ」
時折、正面からぶつかりそうな人が来るたび誘導してくれる。
そんな藤原の優しさに触れるたび、泣きそうになる私がいた。こんな時に思い出してしまうのは、置いていかれまいと必死で追いかけた背中――。
「着いたぞ」
「え、ここ……?」
「高木が好きそうな店だと思って。違った?」
「ううん」
ドアを開けて暖簾をぐぐると、「っらっしゃい!」と、明るい声。
以前に、水瀬さんと一緒に行った居酒屋だった。



