約束の時間は、夕方の6時だった。
ゆっくり眠って起きても余裕があったので、少し早めに出て街でぶらぶら時間を潰そうかと考えていると、偶然立ち寄った本屋で柴咲さんを見つけた。
どうして会いたくない人に限って、会ってしまうんだろう。
これまた自分の不運さんにうんざりしながら、雑誌コーナーにいる柴咲さんの後ろをすり抜けようとしたとき、よせばいいのに彼女が持っている雑誌を見て落ち込んだ。
プロポーズされたら〜が、謳い文句の某結婚情報誌だ。
「高木?」
例えるなら、空が落ちてくるような衝撃だった。
いや、さすがにそれは大げさかもしれないけど、目の前が真っ暗になるくらいのダメージを受けてトボトボ歩いていたところ、藤原に呼び止められた。
彼こそが待ち合わせをしていた人物であり、約束していた時間より早く出くわしたことに、お互い照れ笑いする。
「随分早いね」
「そっちこそ。買い物でもしてたのか?」
「そんなとこかな。どこ行く?」
「行きたい店があるんだけど、ちょっと歩くけどいい?」
「うん」
駅とは反対の方に歩きだした藤原の横に並ぶと、何だか不思議な感じがする。
そもそも休みの日に2人で会うなんて初めてだ。



