「あの手この手で柴咲さんを誘惑して、貴司と別れさせたのはいいけど、いざ婚約をしたら御曹司のお坊ちゃん丸出しの横柄さと馬鹿さ加減でね、柴咲さんに愛想を尽かされたのよ。それで今度はストーカー」

「ちょっと気の毒です」

「柴咲さんが? それとも貴司?」

「両方です。柴咲さんは自業自得かもしれないけど、騙されたようなものですし、水瀬さんは恋人に裏切られて傷ついたと思うんですよね。でも、その御曹司さんに邪魔されてなければ順調に付き合っていたんでしょう?」


いや、邪魔されても2人は想い合っていたわけだ。

禍を転じて福と為すとはこのことなのかな。違うかな。少なくとも焼けぼっくいに火より、強い縁を感じる。


「紗夜ちゃん、あなた本当にいい子ね」

「最近、昌也もそう言って褒めてくれるんですよ」

「でも、いい子なだけじゃ幸せになれないわよ」

「肝に銘じます」


彩さんはそれ以上、もう何も言わなかった。

色々と相談に乗ってくれたし、応援もしてくれたのに、諦めることになってしまって申し訳ない。その気持ちを伝えるべきかどうか悩んだけど、きっと彼女は笑って「水くさい」と言いと思うから、黙っておくことにした。

代わりといっちゃなんだけど、パンケーキに乗っている苺をあげる。