「それで? 紗夜の企画と、彩ちゃんの多忙はどう関係するの?」

「ざっくり説明するとね、企画が頓挫した理由は共同依頼していたサロンさんがダメになって、その代わりになるサロンさんが見つからないからだったんだけど、今回代わりになるサロンを見つけたんだ」

「偉いじゃない、紗夜」

「ううん、見つけたのは水瀬さんだよ」


エミノスさんの変わりは無い。

そう思っていた私たちだけど、実際上からも保留にするようにと指示があったのだけど、水瀬さんだけは諦めず地道な声掛けを続けてくれて、今春から東京に進出するという大阪大手サロンさんに協力してもらえることになったのだ。


「で、そのサロンさんは大阪勤務だった彩さんが懇意にしていたサロンで、彩さんが窓口になってくれるならってことでOKしてくれたんだ」

「なるほど、大阪で人気だったサロンが東京に進出するとなれば話題性もあるわね」

「そうなの! そこに気付くなんてさすが水瀬さんって感じで、しょ……」


そこまで言って、しまったと思った。

何か言いたげな顔をした昌也が、眉尻を下げて静かに頬笑む。

決定的になってしまったあの日、家に帰った私は泣くか寝るかぼんやりするしかできなくて、昌也とユリヤにうんと心配を掛けてしまった。