互いの前髪が触れて、息遣いが近くなって。
ゆっくりと唇が重なりあいキス――――の、寸前で医務室のドアが開いた。
「高木、大丈夫か?」
み、なせさん?
荒々しく中に入ってきたのは水瀬さんで、彼は片手に私のショールを持っていた。そういや、ランチに行くとき肩に掛けていたっけ。さっきの騒動で落としたのか、気が付かなかった。
すみません、と受け取ろうとして、彼の視線が私の手にあることに気付く。
慌てて引っ込めようとしたけど、藤原は離してくれない。
「……警察が事情を聴きたがっている。話せるか」
「あ、はい。いけま、」
腰を浮かし掛けたが、止められた。
「後日にしてもらえませんか? あちこち怪我してるみたいだし、病院にも連れていきたいので」
「怪我!? さっきは大丈夫だと」
「高木が強がるのはいつものことですよ。周りに気を遣ったんです」
勤めて冷静になろうとしているのか抑えめのトーンで話す藤原は、対照的に珍しく慌てた様子の水瀬さんを睨み付ける。
そのふたりに挟まれて、私はどうしていいか分からずオロオロするばかりだ。
この状況は何なんだ……。
「分かった、病院に行くなら車を出すから、」
「タクシーで行くので結構です。な? 高木」