何をやっているんだか……。
自分の不運さに笑ってしまう。
あんな修羅場に出くわしてしまったこと自体ついてないし、助けに入って代わりに蹴られたのも馬鹿みたいだし、あのふたりのやり取りを見せつけられるなんて、もう笑うしかない。
地味に背中が痛いし。
心なんかバッキバキに折れてヒリヒリしてるし、もう何が何だか……。
エントランスより少し奥まった場所にある自動販売機の前のベンチに座り、頭を抱えていると。
「高木!」
慌てた様子の藤原が顔を覗かせた。
「さっき騒ぎがあったって聞いて。大丈夫か?」
「藤原~」
「は? 何泣いてんの? つーか、お前、膝から血が出てんじゃん!」
あぁ、どおりで痛いと思ったら。
黒のストッキングが派手に破れて血が滲んでいるそこは、男に体当たりした時に出来たものだろう。背中の痛みの方が強烈だったから気が付かなかったけど、これはこれで悲惨だ。
「医務室行こうぜ、歩けるか?」
「動きたくない」
「何言ってんだよ、しょうがねぇーなー、もう」
面倒くさそうに呟き、こちらに背中を向けて屈む。
ん? って振り向くそのポーズはもしかしておんぶですか……。



