ドンッ!!!
強い衝撃を受けたのは、私だったのか、男性だったのか。
もつれるようにして地面に転がった際に、落ちたナイフがくるくると回りながら滑っていくのが見えた。
間入れず起き上がった男性が、叫ぶ。
「何するんだぁ、てめぇ、ああ!?」
「柴咲さん、逃げて!」
「え、えぇ、でも……」
「いいから、早く」
恐怖で青ざめている柴咲さんは、ガタガタ震えるだけで動こうとしない。
尋常じゃない怖がり方。
もしかして、この男性って――。
そう思った瞬間、背中に強い痛みを感じた。
「あ……ぅ」
「邪魔なんだよ、お前はよぉおお! 俺とこいつの問題に口出すなや」
「暴力はやめて」
「あぁ、うるせぇ」
また殴られる!
ギュッと目を閉じて咄嗟に体を縮こまらせたけど、予測した衝撃は襲ってこず、変わりに鈍い肉と肉がぶつかるような音がして、男性が吹っ飛んだ。
目の前には口元に血を滲ませ目を見開く男性。
そして、男性を見下ろすように立っていたのは水瀬さんだった。
「大丈夫か!?」
「み、なせさん」
「怪我は? どこを殴られた?」
この時になってようやく駆けつけた警備員に男性は腕を掴まれて、外へと引っ張られて行った。
その間も何かわけの分からない言葉で叫んでいる。



