「私は紗夜ちゃんの味方だからね!」
「ありがとうございます」
普段はポジティブな性格をしている分、反動なのか、落ち込むときは地の果てまで凹んでしまう。
そんな私をありったけの笑顔で慰めてくれた彩さんはこのまま営業先に向かうそうで、お店の前で別れた。信号を渡るのを見送ってから、コートのポケットに手を入れて肩をすぼめる。
今年の冬は例年よりも温かいと言われているけど、それでも1月の風は冷たく身が凍りそう。
必然的に俯き加減の速足で会社へと向かい、エントランスのドアをくぐったところで、ロビーにいた男の人に「すみません」と声を掛けられた。
「開発企画部の柴咲さんは、もうお戻りでしょうか?」
心の中で「げ」と呟く。
どうしてよりによって、私に彼女のことを聞くのよ。
「ランチタイムですので分かりませんが、受付に聞きましょうか?」
「いえ、実はさっき聞いたんですけどまだのようで。思い違いがあったようです、12時にここで待っているようにと言われたと思ったんですけど」
男の人はそう言って笑いながら、後頭部に手を当てた。
取引先の人かな? 優しそうな印象で歳は30代半ばといったくらい。
「もう1時間近く待ってますね、携帯は鳴らしました?」
「それが留守電でして」



