エミノスさんの社長が飛んだという話はマスコミが取り上げたせいで全国に知られることとなり、後に愛人宅に身を寄せていたところ法人脱税違反で逮捕されたと報道された。
この件の余波は広く、エミノスさんと取引が深かった我が社も大打撃を受けることとなり、上層部は修繕作業に追われた。サロンのサポートは営業部に丸投げされたらしい。
「結果的、貴司の首は保留になったんだから良かったんじゃない?」
部長クラスの人は修繕作業に借りだされている今、実質、部の責任者になった水瀬さんは例の3カ月を過ぎでも、存続することとなった。だけど、それも長くは続かないだろう。
近いうちに結果を出さなければ、責任を取らされる日がやって来る。
「そもそも、どうして本社からやって来た水瀬さんが支社の責任を取らされるのか分かりませんけど」
「あぁ、それね。柴咲さんの元婚約者が提示した条件なんだ」
「え?」
「うちと古い付き合いのあるディーラーの御曹司が元婚約者でね、一目惚れした柴咲さんに彼氏がいることを知って権力にものを言わせたのよ。海外に行くか、支社に移動して結果を出すか。貴司は馬鹿みたいにその条件を飲んで柴咲さんを守ろうとしたのに、結果、振られたの」
「そんな……」



