水瀬さんは驚いたような顔をして、私の顔をじっと見つめる。
聞かれなきゃ誰にも言うつもりはなかったのだろう、もし自分が居なくなっても本社に戻ったんだと思わせておけばいいとでも考えているのか。
相談相手はおろか、愚痴の聞き役にさえなれないのが悲しい。
「……せめて、あの企画案が上手くいけば、水瀬さんの力になれたのに」
「俺の力?」
「結果が出れば首にならないんですよね、だから私は、私なんて微力ですけど、それでもっ、」
「ちょっと待て。それであんなに頑張っていたのか?」
「でも、結局ダメでした。頼りない部下ですみません」
あぁ、ダメだ、堪えていたけど涙が零れそう。
泣いてしまうなんてそれこそ情けなくて、見られる前に立ちあがり「失礼します」と部屋から出ようとしたところ、両肩を掴まれた。
そのまま掻っ攫られるように後ろから抱きしめられた。
背中全体に感じる温もり、香り。
なに、なにが起こったの――――。
「困ったやつだな、お前は」
「み、水瀬さんっ」
「それで雪が降っても熱を出しても、寝不足の酷い顔でも毎日毎日凝りもせず」
「凝りませんよ、私、しつこいん性格してますから」
「……知ってる」



