この企画はエミノスさんありきで考えたもので、彼らの協力無しでは成り立たない。仮に、他のサロンさんを代理で使ったとして、その結果は予定の半分、下手をすれば3分の1にも満たないだろう。
それを分かった上で押し切るにはリスクが高すぎるし、代理で選んだサロンさんにも迷惑を掛けてしまう。
「エミノスさん側の問題って何ですかね」
「高木?」
「私、ちょっと聞いてきます!」
ちょっと待て、と呼び止められた気もするけど、じっとなんかしていれない。
どうしてもエミノスさんじゃなきゃ、どうしても。
「藤原」
「ちょっと待ってて!」
営業部は、なおいっそう混乱状態だった。
怒号が飛び交う中を社員が走回り、それらを追うようにあちらこちらで電話が鳴っている。唖然とその光景を眺めていると、やっと手が空いたらしく藤原が出て来て廊下の奥へと私を引っ張った。
「悪い、企画ダメになったわ」
「何があったの?」
「エミノスの社長が飛んだんだよ」
「えっ」
「詳しいことはまだ言えないけど……」
そこまで言うと、藤原は項垂れた。
相当参っているのか、いつも飄々としている彼だけにその姿は痛々しい。



