例えば、好きな人が世界の僻地へ行くことになり一緒に来てくれと頼まれたら、迷うことなく頷くと思う。

それくらい私の頭は恋愛>仕事。

だけど、水瀬さんに出会い仕事の楽しさを知った。

頑張れば頑張った分、労ってくれる嬉しさも、上手く行ったときに褒めて貰える喜びも、失敗したときにフォローしてもらえる心強さも、全部水瀬さんが教えてくれたもの。

与えてもらったものを成長という形で返したいと思うんだ。

単に仕事に逃げてるだけだと言われたら、そうかもしれないけどね。


「うう、こんなに立派になって……」

「え! 待って、どうして泣いてるんですか、彩さん!」

「クソおもんね、もう1回振られてさっさと諦めろ」

「ちょっと、藤原? 何怒ってんのよ」


ピーナッツ投げるの止めて。

完全に酔っぱらってしまった彩さんと藤原をどうしようかと考えていたところ、通路の向こう側からスタスタと歩いてきた人が彩さんの前で止まり、その腕を掴んだ。

……嘘でしょ?

呆然とする私に、憐れむような声が掛かる。


「こいつは飲ますと面倒なんだ、災難だったな高木」

「水瀬さん、どうして」