「睨まれたって言うより、牽制ね」

「牽制……」

「私の男に手を出すなって意味よ。まるで女房気取りね。自分から振ったくせに、女の影が見えた途端、独占欲を出すなんて嫌な女」

「あの彩さん、私はどうして牽制されたのでしょうか」


仄暗いライトがお洒落な空間を演出するダイニングバーの1席で焼酎の湯割りを飲んでいた私は、向かいの席で同じく焼酎を飲む彩さん質問を投げる。

すると、それに答えたのはカシスオレンジを飲む藤原だった。


「ばーか、そんなもんお前が目障りだからに決まってんだろ」

「……目障りって。というか、どうして柴咲さんは私が水瀬さんのことを好きだと知ってるんだろ」

「あのなー、あんだけ毎日好き好きって言ってりゃ、誰だってお前が水瀬さんを好きなの知ってるし。顔に出てるから、ダダ漏れだから」

「あはは、言えてる!」


うう、お願いだから箸で刺さないで。

っていうか、彩さんと藤原っていつの間に仲良くなったの。


「しかし、腕時計を渡すなんてゲスイことするわね」

「俺もそれ思いました。生々しいっての」

「どうして生々しいの?」

「は? お前やっぱり馬鹿? 腕時計なんて外さない限り忘れないだろ? つまり外すようなことをしたってことだよ。ちったぁ想像しろよ」