私が柴咲さんに勝っていることなんて、歳が若いことくらい?

容姿も中身も何もかも、きっと敵わない。


「水瀬が喜んでいたわよ、骨のある部下がこっちでも見つかったって」

「そう思って下さってるなら良かったです」

「本当に?」

「え?」


聞き返した私に、柴咲さんは白い歯を見せて。

小さく首を振った。


「いいえ、あなたのような人が水瀬の下に付いてくれて安心だなって。あ、そうだ、悪いんだけど、これ後で渡しておいてくれない? 忘れ物なの」


何、今の……。

一瞬だったけど睨まれたような?

柴咲さんに渡されたのは、私も普段からよく目にしている水瀬さんの腕時計だった。