今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。



ふぅ、と重めの溜息が聞こえる。

頑固な部下に呆れたのか、水瀬さんは自分のデスクに向かいながらコートを脱ぎ、鞄と一緒に空いている棚の上に置く。その様子を密やかに見ていたつもりだが、思いっきり目が合ってしまった。

切れ長の綺麗な双眸が、わずかに狭まる。


「今日、車で来てるんだが。俺の仕事が終わるまで残るというなら送っていってや、」

「本当ですか!」

「食い気味で答えるな」

「残ります! そのあと、お腹が空いてらっしゃるなら食事も付き合いますので何なりと」

「そこまで言ってない」


ですよね、厚かましくてすみません。

デスクに腰掛けた水瀬さんはパソコンが起動する間、書類をパラパラ捲りながら「そんなにデートがしたいのか」と呆れたように呟いていたけど。

正直、デートなんてどうでも良くて。

ちょっとくらい、その肩の力を抜ける時間があればいいのになって、思っただけですよ。私じゃ力不足でしょうけど、少しくらいなら。少しなら。