「君が優秀なのは分かっているけど、この業界は結果がすべてだから」
「もちろんです」
「約束の3カ月まで、もう時間はないよ」
「まだ1カ月あります」
「その威勢が続くことを期待しているよ。じゃないと君だけじゃなく、僕の首も飛んでしまうから」
「……はい」
まじかよ、と藤原が小さく漏らした声が聞こえる。
部長はその後も水瀬さんに何か言っていたけど、私の耳にはもう届かず。頭の中ではさっきの言葉がぐるぐる回っている。
3カ月の約束? 首が飛ぶ?
それって一体……。
*
「悪くないな、現場の声を取り入れた商品開発とイベントか」
二日後、朝1番で提出した企画書に目を通した水瀬さんは、頷きながら顎に手を当てた。考え事をしている時の癖だ。
「エミノスの青山さんにはすでに話を通しています。その他、メディアに進出している美容家さんにも声を掛けようかと。営業部に協力してもらえる手筈も整えています」
「分かった、引き続き調整してくれ」
やった、取りあえずのOKを貰えた!
いつもなら冷たく突き返されるだけの企画書を、今日は胸に大事に抱きくるりとターンする。さっそく細かい調整をしようと自分のデスクへ向かおうとしたら、後ろから肩をトン、と叩かれた。
振り向くと、水瀬さんがほんの少し口元を緩めている。



