目が覚めると、私は病室にいた。

隣の椅子でかけるたちが眠っている。

あの後、つきちゃんの話では、かけるが私を病院まで運んでくれたらしい。

かけるが帰ってきたとき、皆で泣いて、泣いて、喜び合ったとも聞いた。

私はなんでそんなときに寝てたんだろ…

でも、かけるの寝顔を見るとなんだか嬉しくなった。



かけるの失踪から随分たったある日。

私は最後の外出許可がでた。

これで、最後。

やっぱり、学校に行くのが一番だと思った。

かけるにも、皆にも私は内緒で学校に向かうことにした。

かけるたちどんな表情するのかなぁ。

ビックリして腰抜かしたりして!

そんなことは無いか…

私は一人でにやけながら、通学路を歩いた。

木の方を見ると、せみが止まって鳴いていた。

せみだ!久しぶりに見たな…

もう、最後だな。

この景色も。


学校につくと、私専用の下駄箱。それから机。あと、ロッカーがあった。

なんだか凄く嬉しい。

私にも居場所がちゃんとあるんだ。

私は窓から顔をだし、

「サイコーかよー!」

と、最高の大声で叫んでやった。

皆が、驚いて私を見るけどそんなの関係ない。

久しぶりに心から楽しいと感じたから。

しかし、私の叫んだせいで気づいたのか、かけるが全力で教室まで走ってきた。

そして、私の腕をつかんで、目をまんまるにして

「ふざけてんのかー!?」

と、私の体を揺らし、叫んだ。

私は思わず吹き出した。

そして、外出許可用の紙をかけるに見せつけ、

「かける、私外出許可でたんだよ!」

「学校生活を楽しむんだ!」

と、自慢気に言った。

かけるが、驚いている。

でもすぐに笑い出して

「なんだ、良かったな。」

と、頭をかきながら照れくさそうにしていた。


一時間目の数学。
二時間目の国語も、すらすらと問題がとけた。

クラスの人にも「すごーい!」と言われ、とても嬉しかった。

今日はなんて最高の日なんだろう!


休み時間、かけるが私に数学の習っていなかったところを教えてくれた。

数学は好きだけど、それよりかけるの方が大好きだったから、頭にすらすらと入っていった。


三時間目と四時間目も終わり、昼食の時間になった。

「さくらちゃん!」

「うちらとお昼食べよ!」

クラスの女子は本当に優しい。

こんな私を誘ってくれた。

でも…

「あっ、あの。ごめん。」

そう言って、私は教室を全速力で出て、廊下を走り抜けた。

みんなと一緒に食べるのが怖かったから。

私はもうすぐ死ぬ運命。

だから、お昼ご飯というのは無かった。

あると言えば大量のくすり。

そんなの恥ずかしくて、とても一緒にいられなかった。

屋上に一人。

それも青春らしくていいか。

私が空を見上げていると

「何してるの?」

と私に問う声が聞こえた。

振り向くとそこにはうまくんが居た。

「お昼食べてるの。」

私はくすりをとっさに隠した。

でも、うまくんは気づいていたのか

「隠して何の意味があるの?」

「俺には本当のさくら見せろよ。」

と笑顔で私を見た。

私は自分が情けなくなった。

「そうだね。」

「うまくんはいいなー!」

「私もタコさんウインナー食べたい!」

そう言ってうまくんの横に座ると、うまくんが私の顔をまじまじと見た。

そして、タコさんウインナーを私の目の前に持ってきた。

「食べる?」

「一口ぐらいいいんじゃない?」

えっ!

「そっ、そんなの駄目だよ!」

するとうまくんが、少し怒った。

「もう、死ぬからこそ、食べたいもん食べればいいじゃん」

「そのための、外出許可じゃねーの。」

うまくん…

「貰う!」

そう言って私はうまくんのタコさんウインナーを取って食べた。

おいしー!!

ほっぺが落ちそう。

うまくんは、かけると違ってちょっとキツいけど、

優しいんだな…

私は少しうまくんに惚れた。


あっ、あれ?

なんでだろう。

頭がくらくらする。

「さくら、俺さ…」

「実はさくらのこと、」

「すっ…」

ヤバイ…

「うまくん、ごめん…」

私はそのまま、うまくんにもたれかかった。

「おっ!おい、大丈夫か?」

うまくんがそう言った気がするけど、意識がもうろうとしていて分からなかった。

手足が麻痺してるのもわかる。

ヤバイ。

このままじゃほんとにヤバイ。

誰か…

かける…

助けて。


ガチャっ

そのとき、屋上に誰かが入ってきた。

「さっ、さくら?」

この声はかける!

「おい!何があったんだよ!?」

「うめ!救急車呼んで!」

「う、うん!」

そのとき、つきちゃんも、ひーちゃんも、助けに来てくれた。

そのまま、私は気をうしなってしまった。

その後、かけるは私を背負って走ってくれたらしい。

ごめん。かける。

ごめん。うまくん。

ごめん。みんな。

ほんとにごめん。

こんなことなら、来なきゃ良かった…。


もう、いっそのこと


はやく死ねばいいのに…