はぁ…はぁ…

歩き回ることなんか久しぶりだから、すぐ息がきれる。

学校も、近くの公園も、どこにもかけるは居なかった。

どこにいるの?

かける…

かけるのこと、そういえば何も知らなかった。

かけるがよく行ってる場所なんか到底知らない。

分からないよ…

かける、でてきてよ…。

バタンッ。

私は倒れこむようにこけた。

痛っ…

もう、足に力がはいらない。

私が行ける距離も限られている。

どこ…

どこを探せば…

夕日が眩しい。

かけるもこの夕日、見てるのかな…

そのとき、私の頭の中でかけるの言葉が聞こえた。

(ここ、母さんとの思いでの場所。)

(さくらにも見てほしかったんだ。)

秘密の海…

あの海だ!

なんで今まで思いつかなかったんだろ…

私は、急いで海に向かった。


「かけるー!」

私は海について、すぐに叫んだ。

返事はない…

でも、絶対にここにいるはず。

わたしが浜辺を歩いていると、海の中に人影が見えた。

…かける?

海のど真ん中にかけるがポツンと立っていた。

もうすぐ、沈みそうなところまで浸かっていた。

かける…!?

やめてかける!

死なないで!

私は海に飛び込んだ。

かけるのところへ必死に向かう。

波が強くても関係ない。

かけるに死んでほしくない。

溺れかけても、私は進み続けた。

もうすぐで届く…

「かける!」

私はやっとの思いでかけるの手を掴んだ。

「かける!やめて!」

私がかけるに抱きつくと、かけるが抵抗した。

「離せ!俺は死ぬんだ!」

「死ぬなんてふざけないでよ!」

私はどれだけ抵抗されても、かけるをけっして離さなかった。

海の水がかかっているからよく分からなかったけど、

かけるが泣いているように見えた。

かける…

「なんで、死にたいの?」

「お母さんが死んだから?!」

「…」

私は最低な質問をしたと分かっている。

でも、かけるにちゃんと考えてほしかった。

「罪悪感だけでかけるは死ぬの?」

「そんなの、弱い男がやることだよ!」

「俺は、俺は弱くない!」

「ただ、母さんに謝りにいくだけだ!」

やっぱりだ。

かける。お母さんが死んだの、自分のせいだと…

「白石かける!」

「あなたには、大切な人はいないの?」

「私はいるよ!」

「かけるに、うまくんに、じんたんに、つきちゃんに、ひーちゃん!」

「みんな私の大事な友達!」

「かけるはそうじゃないの?」

「かけるは一人じゃない。」

「一人じゃないのに、私たちを置いて死ぬのはひどいよ。」

「私はかけるが好き。」

「好きで好きでたまらない。」

「ずっと側にいてほしい。」

「私にとっては、かけるが一番だから。」

かけるが抵抗しなくなった…

私はそのままかけるを抱きしめる。

「かける、死なないで…」

そのときかけるが抱きしめ返してくれた。

かける…!!

私はかけるを見上げた。

…!?

かけるが泣いてる。

私はさっきよりも強くかけるを抱きしめた。

「ごめん。さくら。」

「ありがとう。」

私も涙が溢れる。

良かった。

ほんとに良かった。

かけるが生きることを望んでくれた。

かける。大好きだよ。



その後。私たちは浜辺で休んでから帰ることにした。

「さくら。」

「ほんとにありがとう。」

「もうすぐで死ぬところだったよ。」

「俺、母さんにが死ぬ前、実は喧嘩したんだ。」

「最近、さくらたちと遊んでたから、母さんに会ってなくてさ。」

「なんで来てくれないんだって。」

「俺はいらだって、部屋から出たけど、やっぱり謝ろうと思った。」

「だから、飲み物でも買って部屋に行った。けど母さんは居なくて。」

「そのまま、天国にいっちまった。」

「俺のせいなんだ。」

かけるが、下をうつむく。

私はかけるの手を握る。

「お母さんっていうのは、どうしても、第一に子供のことを考ちゃうんだって。」

「かけるのお母さんも、きっとかけるが好きでたまらなかったから、怒ってくれたんだよ。」

「かけるはありがとうって言わなきゃね。」

私はかけるに笑いかけた。

少しでも元気だしてほしい。

かけるがまた泣き出す。

私はかけるの肩にそっと頭をのせた。

するとかけるが、涙をふいて、

「さっき、さくら俺のこと好きって言っただろ…」

「あれって友達として?」

「それとも…」

「異性として?」

と、顔を真っ赤にして聞いてきた。

私も顔が熱くなった。

「そっ、それは…」

どうしよ…

これって、告白みたいなヤツだよね?!

好きって今伝えようかな…

もう、照れて言えないよ!

「かっ!かける!!」

かけるがこっちをチラッと見る。

「もう、足が限界!」

「病院まで、運んでほしいなぁ!」

私は苦笑いで、誤魔化した。

とても今、言える勇気がない。

かけるも、にやっと笑って、

「はいよ!」

と、私をおんぶしてくれた。

おんぶなんて、はずかしい!

でも、とっても嬉しいな。

安心すると眠たくなってきた。

「かける、おやすみ…」

かけるが、クスッと笑う。

私は、ニコッと笑ってから、眠りについた。