ある日。

かけるが、学校の友達を連れてきた。

「えーっと、このムッキムキの人が本馬こうき。」

「で、このメガネがメチャ似合うのが田中じんた。」

「その隣のキツイ目してんのが月島うめ。」

「最後に髪がショートのヤツが永松ひかり。」

そうかけるが、皆を紹介してくれた。

皆、美男美女すぎる…。

私はさっそく仲良くなりたくてニックネームを考えた。

「じゃー、うまくんに、じんたん、つきちゃんに、ひーちゃんって呼ぶ!」

「私はさくら。宜しくね!」

皆がキョトーンとする。

ヤバい。私、馴れ馴れしすぎたかな…。

いきなり嫌われるなんて…

ワハハハハハ!!

えっ!?

いきなり皆が笑い出した。

「ニックネームつけるの上手いね!」

「うまくんはウケた笑」

「てか、さくら可愛すぎる~」

ひーちゃんが、そう言って私のほほをモミモミする。

かけるを見ると、ニコッと笑った。

かけるのおかげで、友達一気に増えた!

かける、ほんとにありがとう。


次の日も、その次の日も、かけると四人が会いに来てくれた。

「これ!あげるわ!」

そう言って、つきちゃんがクッキーをくれた。

パンだとうさぎの可愛いクッキーだ。

クッキーの良い匂いが部屋中にただよう。

おいしそう!!

「かっ、可愛い~!」

「これつきちゃんが作ったの?」

ひーちゃんがつきちゃんの肩に手をおき、

「そー!うめは料理の天才だもんね!」

と、自慢気に言う。

「うめって呼ばないで!」

「はずかしい!」

その瞬間、男子たちが吹き出す。

「おまえ、もう何年よばれてきてんだよ!」

私も吹き出す。

つきちゃん、うめが嫌なんだ。

可愛いな。


こんな何気なく楽しい日々が毎日続いた。

まるで、学校に行ってるみたいだ。

こんな日がずっと来ると良いのに…。



それから何週間後。

ある日の夜。

いきなり病院中が騒がしくなった。

看護師さんたちが廊下を駆け回っていく。

なにかあったのかな…?

すると、パトカーの音も聞こえた。

事件?

そんな訳ないか…

私はなにも気にせず、そのまま寝てしまった。

まさか、あんなことになると思わなかったから。


次の日から何故か、かけるも皆も来なくなった。

毎日欠かさず来てくれたのに…

でも、もしかしたら何か用事があるのかもしれない。

私はかける達が来るまで待つことにした。


でも、皆、何日たっても来なかった。

私は、寂しくなり中庭に行ってみようとした。

『三日前の夜。〇〇病院の屋上から女性が転落する事故が起きました。』

中庭の途中の広場で、テレビの声が聞こえた。

〇〇病院って、ここ…?

もしかして、この間の…

『亡くなったのは、白石ゆきかさん。39才。』

『警察は自殺として調査を進めているところです。』

白石ゆきか…

白石って、かけるの?

いや、まさかね。

私はそのまま中庭に向かった。


中庭の花壇。

かけると初めて合った場所だ。

かけるの好きな花がいっぱい咲いている。

かける…

どうして会いに来てくれないの?

今、なにしてるの?

さっきの人かけるのお母さんじゃないよね?


そのとき、

「さくら!」

遠くからうまくんが走ってきた。

凄く息が荒くなっていた。

「どうしたの?!うまくん」

私はうまくんの方へ駆け寄った。

うまくん?!

泣いてるの…?

なんで…

「かけるに何かあったの…?」

私はとっさに聞いた。

絶対かけるのことだと思った。

うまくんがこれだけ必死になってるから。

「うまくん、何か知ってるの?」

「知ってたら話して!」

「私、皆の友達だよ!」

「皆が来ない理由ぐらい、知りたいよ!」

私はうまくんをじっと見つめた。

うまくんも見つめ返す。

真剣な表情だ。

「かけるが今、行方不明なんだ。」

「今、3人がかけるの居そうなところ必死に探してる。」

「さくらは、ここのニュースみたか?」

ニュース…

白石ゆきかさんのことだ。

「うん。」

「ここで、自殺した人。実は、かけるのお母さんなんだ。」

「すい臓がんで余命いわれてたけど、生きるのが耐えられなくなって、自殺したらしい。」

「これは、かけるのお母さんのせいでもない。かけるのせいでもない。」

「でも…かけるは多分、自分のせいだと思い込んでる。」

それって…

じゃあ、今かけるは…

「もしかして…」

「うん。自殺するかもしれない。」

…!?

そんな…

そんなのやだよ。

かけるが死ぬなんてやだよ。

助けなきゃ。

「私もかける探す!」

「かけるを助ける!」

私はすぐにかけるの元へ行こうとした。

「お前は体が弱いだろ!」

でもうまくんは、そう怒鳴った。

なんで…?

そんなのひどいよ。

「何処かけんとうはないか?」

私だって、かけるを助けたいのに。

じっとなんてしてられない!

私はうまくんを押しのけて走った。

「おい!!」

うまくんが私の手を掴む。

「やめてよ!」

「なんで、私は行っちゃダメなの?」

「私、かけるが好きなの!」

「死んでほしくないの!」

「離してよ!」

涙が溢れる。

うまくん、信じてよ。

絶対見つけるから。

そのとき、うまくんが私の手を離した。

「なんか、あったらすぐ電話しろよ。」

「俺、向こう探すから。」

そういってうまくんは走っていった。

ありがとう。うまくん。

私はうまくんに背を向け、走り出した。