「瀬里さんとは一年前に偶然知り合い、一緒に食事をしたり親しくさせていただきました。いつの間にか男として瀬里さんに惹かれてましたので、一方的な気持ちではあるのですが、結婚を前提にお付き合いをと思い、瀬里さんのご返答とご両親のお許しをいただきに参上しました」

口許に時折り淡い笑みを称え、気負った風でもなく滑らかな口調で。

「一ツ橋二の組の若頭補佐という肩書は、付属品だと思って下さって結構です。僕も彼女もただの男女で出会いましたから、そのつもりで今日はお伺いしたんです」

相当な場慣れはしてるんだろう。お父さんを前に全く動じた様子もなく。これが本来の晶さんなのかと言えば。・・・きっとそれも違う気もした。

「つまりは、娘の返答次第で禍根を残すような真似をするつもりは無いってぇ、有り難いお話ですかな」

わざと上から威圧的に返したお父さん。相手の出方を探る時の常とう手段だ。

「誓って。瀬里の気持ちを権力や力尽くでどうにかしようなんて、考えたこともありません。・・・そういう下衆なやり方は一番嫌いなもので」

真剣な眼差しを向けた晶さんはほんの最後、力を込めてそう言い切った。